昨年2015年8月~12月にかけて、風邪の症状の後に子供にマヒが残る原因不明の病気が流行しました。
本日8月29日の厚生労働省研究班からの発表によると、子供のマヒ(急性弛緩性麻痺)を起こした原因が「エンテロウイルスD68」である可能性がやはり高いようです。
昨年の夏から秋にかけて、原因不明の体のまひを訴える子供が全国各地で相次いだ問題で、厚生労働省の研究班は29日、検査した患者の約4分の1からかぜに似た症状を引き起こす「エンテロウイルスD68」を検出したことを明らかにした。研究班は、まひの原因は同ウイルスの可能性が高いとみて、調査を続ける。
やはり高いというのは、昨秋に大流行した段階でエンテロウイルスD68が複数の子供からすでに検出されていたので、エンテロウイルスD68がマヒを起こす病気の原因ではないかと考えられていたからです。
日本で流行する前年の2014年にアメリカで、風邪の症状の後に子供にマヒが残る症状が出る病気がアウトブレイクしたのですが、この時も多くの子供からエンテロウイルスD68が検出されていました。
(CNN) 米ニューヨーク州当局は15日までに、重い呼吸器系の症状を引き起こす「エンテロウイルスD68型」に州内で数十人が感染していることが確認されたと発表した。
中西部のミズーリ、コロラド、イリノイなどの各州では呼吸器系の疾患で子ども数百人が手当てを受ける事態になっており、11日までに6州で80例を超すD68型感染が確認されている。しかし北東部で感染が確認されたのはニューヨーク州が初めて。
このエンテロウイルスD68とはどのようなウイルスで、どのように予防・対処すればいいのでしょうか。見ていきましょう。
エンテロウイルスD68とは
エンテロウイルスにはたくさんの種類があり、ポリオウイルスや手足口病の原因になるウイルスもエンテロウイルスの一種になります。
エンテロウイルスD68に感染すると、発熱や鼻汁や咳など風邪の症状を引き起こすのですが、ぜんそくのような呼吸器疾患を引き起こすことも以前から知られていました。
アメリカ・日本で流行
このエンテロウイルスD68に感染したと考えられる子供たちが、2014年にアメリカ各地で相次ぎました。
そして1年遅れた2015年に日本でも、エンテロウイルスD68に感染したと考えられる子供たち続出したのです。
なぜアメリカや日本でエンテロウイルスD68の感染が流行したのかははっきりとわかっていませんが、マヒ(急性弛緩性麻痺)の症状が現れたり、まれに重症化してマヒが残ることがあるため、昨年はかなり注意喚起が行われました。
今年は今のところまだ流行しているという話は聞きませんが、9月をピークにしてこれからの時期に流行するウイルスのようなので、これからも注意をする必要があるでしょう。
それではどのような注意をすればいいのでしょうか。
エンテロウイルスD68の予防方法
エンテロウイルスD68のワクチンはありません。またアルコール消毒も効果がないと考えられています。
ポンプ式のアルコール消毒は簡単ですが、あまり効果はえられないでしょう。
それではどうすればいいのでしょうか。
手洗いが大事
多くの場合エンテロウイルスD68は、飛沫感染、接触感染が主な感染源なので、インフルエンザの予防と同じように手洗い、うがいをきちんとすることが必要となります。
赤ちゃんなど小さな子供の場合、お母さんがきちんと手を洗ってあげることが大事になってくるということです。
保育園などで集団感染をすることもあるかもしれませんが、大人が家庭にウイルスを持ち込むこともあるかもしれません。
ですのでお父さんさんやお母さんが帰宅後にきちんと手洗いをして、家庭にウイルスを持ち込まないようにすることも大事になります。
もし大人が風邪の症状が出た時は、家の中でもマスクをするなど家族、特に子供にウイルスを感染させないように飛沫感染を防ぐ必要もありますね。
また、くしゃみをしたときや鼻水を噛んだ時のティッシュなどもすぐにごみ箱に捨て、その都度手を洗うということも大事になります。
一番には風邪の予防と同じく、手洗い・うがいといった基本的なことが最も効果的なので、普段から習慣づけてしまうといいのではないでしょうか。
単純な方法ですが、ぜひ手洗い・うがいを忘れずに続けてくださいね。
もしエンテロウイルスD68に感染したら
もし子供がエンテロウイルスD68に感染したらどうすればいいのでしょうか。
エンテロウイルスD68に感染すると、まず最初は風邪の症状が出るのですが、病院でもこのときにエンテロウイルスD68に感染していることはわからないと思います。
子供に風邪の症状とともにマヒの症状が出た場合、エンテロウイルスD68に感染している可能性があります。
きちんと医師に子供にマヒの症状が出ていることを伝えましょう。
エンテロウイルスD68に感染すると以下のような症状が出るようです。
症例1:11か月男児。急性弛緩性脊髄炎で入院
9月6日から発熱(39.1℃)、7日からポリオ様の右弛緩性麻痺が出現して同日紹介受診し、原因検索のため入院した。9月9日~10日にかけて左下肢も弛緩性麻痺が進行して対麻痺となった。症例2:4歳女児。気管支喘息大発作で入院
8月中旬から鼻汁・咳嗽があり、23日夜から咳嗽が増悪した。24日深夜に起坐呼吸・多呼吸で覚醒し、入眠困難だった。翌25日朝にかかりつけ医から酸素投与下に救急搬送され、同日から7日間入院した。発熱なし。症例3:3歳女児。気管支喘息大発作で入院
8月29日から咳嗽があり、夜間には発熱(37.9℃)・喘鳴・陥没呼吸が出現した。翌30日朝にかかりつけ医から酸素投与下に救急搬送され、同日から6日間入院した。入院後に下痢(最大1日3回の軟便)あり。症例4:5歳女児。気管支喘息大発作で入院
9月4日から小紅斑、7日から咳嗽が出現し、12日午後から呼吸困難・発熱(39.2℃)があった。同日紹介受診し、活気不良・喘鳴・頻呼吸を認めたため同日から7日間入院した。下痢なし。
初期症状では、医師でもなかなか判断がつかないようです。
また特効薬のようなものはないので、対処療法が基本となります。
まずは感染しないということが最も大事になってきますので、家族全員がきちんと手洗い・うがいをするということ忘れないように実行してくださいね。